2025年10月25〜26日に開催された「東京エクストリームウォーク100」を完歩しました。
シューズは、なんと自作のワラーチ。
理由があってこれを選んだのですが、正直なところ
「本当にワラーチで大丈夫か?」
「100キロなんて歩けるのか?」
という不安もずっとありました。
結論から言うと、ワラーチでも100キロは十分歩けます。
実際どうだったのか、準備から当日のようす、足のトラブル、ワラーチの履き方までレポートします。
東京エクストリームウォーク100当日の様子はこちらの記事をご覧ください。

なぜシューズではなくワラーチを選んだのか

ワラーチを選んだ最大の理由は、怪我のリスクが一番低いと判断したからです。
ここでいう「怪我」とは、
- 足のマメ
- 爪の割れ・剥がれ
- 足の皮むけ
など、「決定的に歩けなくなるトラブル」のことを指します。
100キロを完歩するには、体力ももちろん大事ですが、それ以上に
「いかに怪我を回避するか」
が重要だと感じていました。
その鍵を握るのが「履物選び」です。
ワラーチのメリット
ワラーチにはシューズと比べて、以下のようなメリットがあると考えています。
- 足裏とのフィット感がとても高い
- 摩擦によるマメなどのトラブルが起こりにくい
- 足の周囲が囲われていないので、爪が前に当たらない
僕は過去に、うちあったテキトーな靴でエクストリームウォークに参加し、足のトラブルだらけで途中リタイアした経験があります。
なかでもとくに辛かったのが爪の剥がれでした。
気づいたら発生していました。激痛です。
あまりにも痛くて、靴を脱いでみたら爪が剥がれていたのでした。
こうなってはもう歩くことはできません。
だから是が非でも回避しなければならない。
「僕の場合、靴は危険だ。爪の剥がれを回避するには、もうワラーチしかない」
そう思って、今回はワラーチでの参加を決めました。
自作ワラーチを選んだ理由
使ったワラーチは、市販品ではなく自作ワラーチです。
その理由は大きく3つあります。
- 既製品は高い(1万円くらい)
- 自分の求める靴底の厚さ・軽さのモデルがなかった
- 「高い靴じゃないと100キロ歩けないわけじゃない」と証明したかった
自作ワラーチなら、
- 好きなソール素材・厚さを選べる
- 価格を3,000円前後に抑えられる
というメリットがあります。
「特別な高機能シューズじゃなくても、工夫すれば100キロ歩ける」
それを実証したかった、という気持ちも大きかったです。
本番前に行ったテスト歩行
僕は普段からワラーチを履いているのですが、本番前には意識的にテスト歩行も行いました。
- 距離:5キロ〜30キロ
- 結果:足裏のトラブルはゼロ
過去にリタイアしたときは、20〜30キロあたりで足が痛くなり始めました。
それが、今回は30キロまで問題なし。
「30キロまで大丈夫なら、その先もある程度は大丈夫だろう」
そう判断し、実際の本番も、だいたい想定通りの感覚でした。
練習の内容は以下の記事にまとめてあります。気になる方はご覧ください。

実際に100キロ歩いてみてどうだったか
まず結論から言うと、
- マメ
- 皮むけ
- 爪割れ・爪剥がれ
といった、決定的に歩けなくなるようなトラブルはゼロでした。
しかも今回は、2日間ずっと雨。
スタート前から足はずぶ濡れというコンディションでしたが、それでも重大なトラブルにはなりませんでした。
雨とワラーチの相性
雨で心配だったのは、濡れることより「寒さ」でした。
「足が冷えすぎるのでは?」と思っていたのですが、意外にも足はずっと暖かかったです。
運営の方からは「寒そう」と心配されましたが、本人は何の問題もなし。
足は濡れているけれど、おそらくソックスが吸った水が体温で温められていたのだと思います。
シューズの場合、雨がひどいと「靴の中に水がたまって不快」という問題が出てきます。
防水用に足を袋で覆っている人もいましたが、歩きにくそうでした。
一方、ワラーチは簡単に濡れるものの余計な水が抜けていくので、濡れていても「歩きにくい」という感覚はあまりありませんでした。
靴には雨対策が必要です。
ワラーチは「濡れる前提」で割り切れば、雨でもかなり安心して歩ける。
そんな感覚を持ちました。
足裏の痛みはどうだったか
とはいえ、ノーダメージだったわけではありません。
足の裏の痛みは、だいたい50キロ手前くらいから出始めました。
マメや皮むけではなく、「足裏全体が痛くなる」タイプの痛みです。
足の裏が痛くて、そっとしか足を地面につけられないような状態になっていました。
歩きに確実に支障をきたす痛みです。
止まると痛いので、なるべく動き続けた
経験した人はわかると思いますが、痛みは休むとひどくなります。
- 歩き続けて足が温まってくる → 痛みが少し和らぐ
- 信号待ちなどで立ち止まる → 痛みが増す
こんな状態だったので、「なるべく止まらない」「信号のタイミングを見てリズムを崩さない」ように意識して歩いていました。
チェックポイントの休憩も最低限で済ませます。
僕は第3チェックポイント(54km)まで座りませんでした。
また、痛み止めも使いました。
これがかなり効いてくれて、痛みが出てからの後半50キロを持ちこたえる助けになりました。
痛み対策については、当日の持ち物についてまとめたこちらの記事が参考になるはずです。

クッション性のある靴だったらどうだったか?
正直なところ、クッション性のある靴を履いていたら、足裏の痛みはもう少し抑えられたと思います。
エクストリームウォーク翌日、ほぼ歩けないくらい足が痛かったのですが、普通の靴を履いてみたら意外と歩けたんですよね。
素足やワラーチとは明らかに痛みが違ったんです。
そのとき履いていたのは、ワークマンで買ったごく普通の靴です。
ただの靴でこんなに楽なら、クッション性がある高機能シューズならもっと負担は違うのかも、と思わずにいられません。
だったらはじめからシューズを履けばいいじゃないかとなりそうですが、
- 自分に合う靴が見つけられなかった
- 過去に靴で痛い思いをしている
- 「ワラーチなら怪我をしない」という自信があった
という理由から、ワラーチで正解だったと感じています。
「足へのダメージは靴の方が抑えられそう。でも、トラブルが出にくかったのはワラーチだった」
ということです。
今大会のワラーチ使用率は0.06%?
『Born to run』などの影響でベアフットランニングはかなり広まってきました。
だからエクストリームウォークにもワラーチの人がいくらかいると思ったのですが、そんなことはありませんでした。
当日の参加者は約1,600人。
僕が確認できた限りでですが、その中でワラーチを履いていたのは僕だけでした。
つまり、ワラーチ使用率は…
1,600分の1 → 0.06%
圧倒的に少数派。なんならちょっと変わった人の部類です。
ただし、「靴以外」の履物の人なら他にもいました。
- 市販のスポーツサンダル:1人
- 白足袋:1人
- 僕のワラーチ:1人
これも確認できた限りで、合計3人です。
これらを合わせると、
シューズ以外の履物率:1,600分の3 → 約0.18%
とても少数派ですが、いずれもコース終盤(第3CP以降)で見かけたので、おそらく全員完歩しているのではないかと思います。
靴じゃなくても、完歩は十分可能なのです。
僕のワラーチの履き方
さて、ワラーチで行くぞ!と決めたものの、練習の段階から、
「素足にそのままワラーチはちょっと危ないかも…」
と感じていました。
理由は、
- ひもと足の甲の当たる部分が擦れて痛みが出る
- 本当にクッション性がゼロなので、足に負担がかかりそう
このあたりを解消するために、僕はワラーチにひと工夫しました。
① 足にテーピングを巻く
テーピングを巻いた目的は2つ。
- 足の指先の保護
- 足のアーチをサポートするため
とくに長距離になると、アーチへの負担が大きくなるので、サポートを入れておくことで後半の持ちがかなり変わります。
今回、足に痛みがで始めたのは50km付近からでした。
前回は20km前でもう痛かったので、テーピングがうまく機能したのかもしれません。
テーピングの巻き方はこちらの動画を参考にしました。
② タビ型ソックスを履く
テーピングを巻いたら、靴下を履きます。
採用したのが、親指だけが分かれているタビ型ソックスです。
これを履くことで、
- 足まわりの保温
- ワラーチとの接触による擦れの軽減
- ほんの少しだけクッション性がプラスされる感じがする
といった効果があります。
足にテーピング → タビ型ソックス → その上にワラーチ
という三層構造でかなり安心して歩けるようになりました。
雨の中でもテーピングとソックスは持ったのか?
ほとんど「靴下だけで外を歩いている」ようなスタイルで、しかも2日間ずっと雨だったので足はずっとずぶ濡れでした。
それでも、
- テーピングは最後までしっかり機能
- 途中の54キロ地点で追加のテーピングを実施(アーチサポート強化のため)
- 同じく54キロ地点でソックスも交換
濡れていてもとくにトラブルは出ていなかったので、極端な話、ソックスは交換しなくても最後まで行けたと思います。
ただ、足の状態をチェックしたかったのと、後半に向けて気分を一新するためにソックスとワラーチを交換しました。
ワラーチまで交換するのはオーバーかもしれませんが、ソックスはリフレッシュと怪我防止のため、何もなくても1回くらいは交換した方がいいかもしれません。
使ったソックスは、
- 特別高価なものではない
- 薄手で、乾きやすそうな素材
- 親指だけが分かれたタビ型
ワラーチで歩くなら、タビ型ソックスはほぼ必須だと思います。
5本指ソックスも候補にしたのですが、過去にリタイアしたときに履いていたのが5本指で、
「もしかして、5本指ソックスの生地が爪に当たっていたのでは…?」
という違和感があったので、今回はタビ型一択にしました。
エクストリームウォークにワラーチはおすすめか?
結論として、ワラーチでも100キロは十分歩けますので、合う靴がない人にはおすすめできます。
ただ、「ワラーチだから100キロ歩ける」というわけではありません。
大事なのは、
高機能かどうかではなく、
自分の足に合っているかどうか(=トラブルが出ないかどうか)
です。
もし今、履いている靴で
- マメができやすい
- 爪が当たって痛い
- 長距離になるとトラブルが頻発する
といった悩みがあるなら、ワラーチやスポーツサンダルを検討してみるのも一つの選択肢だと思います。
いきなり本番ではなく、まずはテストを
ワラーチを使うなら、しっかりテストをしてからにしましょう。
いきなり本番で100キロ歩くのは無謀です。
- まずは5キロくらいから試してみる
- 問題なければ10キロ → 20キロ → 30キロと距離を伸ばす
30キロ歩いて何ともなければ、その先もかなり期待できます。
怪我が出始めるのが、だいたい20〜30キロあたりだからです。
ただ、「いきなり30キロ歩こう」と思うと腰が重くなりがちなので、まずは5キロ(約1時間)から始めましょう。
練習の仕方についてはこちらの記事をご覧ください。

自作ワラーチで100キロ歩くということ
自作ワラーチの良いところは、
- 安く作れる
- デザインを自由に決められる
といった実用面もありますが、何よりも大きいのは、
「愛着がすごい」
という点です。
愛着のある履物で100キロを完歩すると、達成感・満足度がものすごく高くなります。
今回の大会では、約1,600人の参加者のうち、完歩は約1,100人だったと言われています。
その中で、「自作の履物で完歩した人」は、たぶん僕ひとりでしょう。
そう考えると、「自分の手で、そこまで信頼できる履物を作れたんだ」という事実が、とても誇らしく感じられました。
ワラーチはその歩き方も含めて奥が深い。
もっと使いこなせるはず。
そう思うと、これを履いて歩くのが楽しくなります。
まとめ:ワラーチは「選択肢のひとつ」としてとてもアリ
ワラーチを作ること自体は、決して難しい作業ではありません。
材料費もそれほどかからず、工作が好きな人なら、楽しみながら作れると思います。
- 靴のトラブルに悩んでいる
- 高価なシューズを買う前に、ほかの選択肢も試したい
- 自分だけの履物でチャレンジしてみたい
そんな人には、自作ワラーチ+テーピング+タビ型ソックスという組み合わせは、十分検討する価値があると思います。
100キロウォークは、「特別な人だけのチャレンジ」ではありません。
大事なのは、
- 自分の足のことを知ること
- 自分に合った装備を見つけること
そして、まずはエントリーすること。
あなたもワラーチで100キロに挑戦してみませんか?




